- やらなければならない仕事が山積みなのに、どの仕事も中途半端
- 1日がんばって働いたけど、成果が何も出なかった
- 「今日1日何をしていたんだろう」と途方に暮れる
「やらなければならない仕事はたくさんあるのに、1日終わってみるとほとんど片付かなかった」という経験はありますか?
私は、後輩に「今日何してたんですか?何が終わったんですか?」と怒られたことがあります。
確かに忙しかったのですが、やるべき仕事は終わっておらず、「いったい何をしていたんだろう…」という有り様でした。
さて今回は、次のような悩みを抱えている方に向けて記事を書きます。
- 片付かない仕事が山積み。どれも中途半端にしか終わらない
- 仕事は増える一方で、達成感も感じない
- いろいろなことに気を取られて集中できない
こんな方におすすめなのが、シングルタスクです。
参考にした本はこちらです。
この本を読んで、私が実際にやってみて感じたことや、取り組むためのコツを紹介します。
この記事を読むことで、次の3点がわかるようになります。
- マルチタスクをすべきでない理由
- シングルタスクの大きなメリット
- シングルタスクに取り組むコツ
それでは、さっそく解説していきます。
マルチタスクをすべきでない理由
かつての私は、「仕事がデキる人はきっと頭の回転が早くて、いくつもの仕事を同時こなせるんだろう」と思っていました。
私はマルチタスクを実践し、そしてどツボにハマったのでした。
この本に出会い、マルチタスクは優秀さを証明するものではないということに気づきました。
マルチタスクをすべきでない理由は、大きく次の3つです。
① 脳は同時に2つ以上のことができない
マルチタスクは業務効率を上げるのではなく、むしろ逆効果です。
本書の中では、マルチタスクできない理由を次のように述べています。
何かをしているときに、別のこと(タスク)に集中することはできない。
なぜなら2つのタスクのあいだで『干渉』が生じるからだ。
人にはマルチタスクをこなすことなどできない。
デボラ・ザック『SINGLE TASK 一点集中術』2017(ダイヤモンド社)
簡単にいえば、脳は同時に複数のことに注意を向けることができないということです。
車の運転をしながら、スマホを見ることはできません。
長電話を受けながら、こっそりメールの返信をすることはできません。
マルチタスクをしている人は、実際には「マルチタスクできている気になっているだけ」なのだそうです。
なぜこのような錯覚に陥るのでしょうか。
② マルチタスク=高速で作業を切り替えているだけ
本書では、マルチタスクの本当の姿を次のように述べています。
てみじかにいえば、マルチタスクは不可能であり、一般に「マルチタスク」と考えられている行為は「タスク・スイッチング」にすぎない。
タスクからタスクへとせわしなく、注意を向ける先を無益に変えているだけだ。
デボラ・ザック『SINGLE TASK 一点集中術』2017(ダイヤモンド社)
これはどういうことを言っているのでしょうか。
テレビを見ながら勉強することを例に挙げてみましょう。
やっている行為は『手元のテキストや問題集などをやりつつ、テレビから気になる音が聞こえたらテレビを見る』というものです。
勉強しながらテレビの音にも注意を払っているように見えますが、実際には違います。
勉強とテレビの音を聞くという作業を、コンマ何秒という短い時間で切り替えているだけなのです。
タスク・スイッチングは強制的に脳を高速で切り替えさせます。
そのため、切り替えのたびに集中力が落ちて、効率が下がっていくのです。
③ 前頭前野(脳の部位)の奪い合い
タスク・スイッチングのほかにも、マルチタスクには弊害があります。
それは、脳の前頭前野という部位に負荷が集まりすぎて、作業効率が悪くなることです。
前頭前野とは、思考や創造性などを司る部位です。
「ワーキングメモリ」といって、一時的に頭の中に記憶を保持する機能も持っています。
ワーキングメモリは容量が決まっているので、前頭前野に負荷が集まると、容量オーバーで処理が進まなくなります。
前頭前野の奪い合いの結果、本書では次のような結果になると述べています。
いわゆる「マルチタスク」行為は「認知処理機能を低下させ、より深い学習を妨げる」のだ。
デボラ・ザック『SINGLE TASK 一点集中術』2017(ダイヤモンド社)
つまり、マルチタスクにはデメリットばかりで、百害あって一利なしなのです。
では、シングルタスクに取り組むとどのような効果があるのでしょうか。
シングルタスクの効果
私がシングルタスクを実践してみた結果、次の3点を実感しました。
- 集中力が増す
- 情報がスッと入ってくる
- 不安感がなくなる
一言でいえば「ゾーンに入る」という感覚です。
それぞれシングルタスクの効果を、効果の大きな順に紹介していきます。
① 集中力が増す
シングルタスクで仕事に没頭しているときは、集中力が大幅アップしている感覚があります。
他のことに注意が向かずに、目の前の仕事だけに力が注がれる感覚です。
映画館の暗い中で、スクリーンだけ見て、映画の世界に没入しているのに近いです。
シングルタスクの最も大きな効果は『その仕事だけに集中することができる』ことです。
② 情報がスッと入ってくる
難しい文章(たとえば法律など)を読むときでも、スッと内容が入ってきます。
シングルタスクをしていない状態だと、理解できずに何度も読み返すことになります。
目の前の情報だけに集中するため、インプットの効率が良くなると感じます。
③ 不安感がなくなる
目の前の仕事だけに集中するので、あれこれ考えて不安にならないという効果があります。
まずは目の前の仕事にキリをつけて、それが終わったら次!と決めているからです。
しかし突然「あ、アレやらなきゃ」と頭に浮かぶこともあります。
そんなときは、次に紹介する「シングルタスクの実践方法」で対処方法を参考にしてみてください。
シングルタスクの実践方法
シングルタスクを実践するうえで、環境を整えることが大変重要です。
シングルタスクをするときに、私が気をつけていることを紹介します。
誘惑から距離を置く
そもそも、タスク・スイッチングをしてしまう原因は「大量の誘惑に囲まれているから」です。
人は目新しいことに、つい注意を向けたくなってしまいます。
たとえば、ラインで誰かに連絡を取ろうとしてスマホを開いたとしましょう。
他のアプリや通知が気になって、ついそちらを見てしまっていた。という経験ありませんか?
シングルタスクをするならば、注意が散ってしまうものから距離を置くことが重要です。
① 机の上には今やることだけ
仕事机の上を想像してみてください。
いろいろな書類や、電話メモがありませんか?
パソコンは関係のないアプリを開いていませんか?
シングルタスクでゾーンに入ろうと思ったら、今やっている仕事以外は机の上からどかしましょう。
たとえ電話メモを渡されても、いったんスルーします。
今やっている仕事だけに集中したいからです。
ただし、1分以内に終わるような用事は別です。
すぐに完了できるタスクは、受け取ったその瞬間に片付けるようにしましょう。
なぜなら、些細なタスクをよけておくと、あとでタスク数が大量に増えてストレスになるかれです。
書類などを受け取った時点でいったん集中が途切れてしまうため、1分程度で終わるタスクならすぐに片付けるルールにしています。
② 今ここに集中する
目の前の仕事に集中しようとしているのに、頭の中にふと別の考えが浮かぶことがあります。
「○○○の仕事、どうやって進めよう。気が重いなぁ」
「そうだ、Aさんにメール送らなきゃ」
などです。
頭は勝手にいろんなことを考えてしまうので、別の考えが浮かぶのはしょうがないです。
そんなときは、いったん紙に書き出して、頭の外から追い出すようにします。
モヤモヤが頭の中にあり続けると、集中力を奪っていきます。
過去のことも、未来のことも、いったん紙の上に吐き出しましょう。
ちなみに、私はGoogle ToDoリストというアプリを使っています。
ずっと紙のTODOリストを使っていましたが、紙はタスクの管理が大変です。
個人的に、Google ToDoリストは超おすすめです。
割り込みをいかに断るか
仕事をしていると、他者からの割り込みが必ず発生します。
特に困るのは「至急で対応してほしい」という依頼です。
至急案件への対処は、シングルタスクの集中を妨げるものです。
シングルタスクを極めようとするならば、自分のキリがつくまで待ってもらうのが正解です。
しかし、私を含めて多くの人は「わかりました。すぐ対処します」と答えてしまいます。
なぜなら「他者からの期待に応えたい」とか「評価されたい」という欲求が捨てられないからです。
正直、ここが一番苦労するポイントだと感じています。
「これができれば、断りやすい」と感じたポイントを紹介します。
①今何を優先すべきか伝える
ギチギチに詰まったスケジュールの中に、突然至急案件が入ったとしましょう。
「相手の期待に応えたい!」という欲求に従うと、つい安請け合いしがちです。
しかし自己承認欲求に従うと、仕事が期限に間に合わなくなります。
ここで重要なのは、自己承認欲求よりも、仕事をきちんとこなすことを優先すべきだと肝に銘じるのです。
至急案件が入ったときに、私は次のことを相手に伝えるようにしています。
- 今抱えている仕事と、その期限を伝える
- 至急案件に対処すると、どんな不都合が生じるか
- その上で、依頼してきた人にいつまで待てるかを聞く
このように伝えると、たいていの場合は待ってくれます。
実際は、そんなに緊急ではないことが多いようですね。
しかし、たまに嫌な顔をされることもあります。
私は、相手に嫌われたくないので、次のように対応するよう心がけています。
② とても申し訳なさそうに伝える
パソコンなどの手はいったん止めます。
相手のほうに体を向けて、精一杯「申し訳ない!」という表情をしながら話します。
相手も「それならしょうがないか」という反応をしてくれることが多いです。
③ ちょっとずつ断る練習をする
他者からの割り込みは、突然やってきますよね。
電話での問い合わせ、来客応対、同僚からの雑談など。
シングルタスクに慣れるまでは、ちょっとずつ断る練習とするといいと思います。
- 社外の人の依頼を断るのが気まずければ、まずは社内の依頼から
- 依頼を丸ごとを断るのではなく、今の仕事にキリがついたら着手すると伝える
- 質問や問い合わせは、今の仕事にキリがついてから対応する
ただし、相手が声をかけやすい雰囲気は失わないように気をつけましょう。
シングルタスクと矛盾するようですが、職場の人間関係を円滑にしておくことも重要です。
まとめ
今回の記事では、シングルタスクの効果や実践のコツについて紹介しました。
- 脳は同時に2つ以上のことができない。できると思っていても、高速で切り替えているだけ
- シングルタスクで仕事をすると、集中力が増してゾーンに入る
- マルチタスクへの誘惑を絶つために、今目の前の作業に集中できる環境を整える
シングルタスクを実践するのは、実際はかなり難しいです。
なぜなら、自分で完結する仕事よりもむしろ、他者が絡む仕事が多いからです。
他者が絡む場合は、いったん自分の仕事にキリがつくまで待ってもらうなどの工夫が必要です。
シングルタスクで仕事に取り組めば、過度に消耗せずに仕事の成果を上げることができます。
これを読んだ人の仕事のあり方に、少しでも役に立てると嬉しいです。
本の詳細が気になる方は、ぜひデボラ・ザックさん著の『SINGLE TASK 一点集中術』を手に取ってみてください。